2024.2.15
佐藤鋼材株式会社 代表取締役社長 佐藤健太郎さん
斜陽化する鋼材販売に変わる、新たなミニコンテナ事業
佐藤鋼材株式会社は佐藤健太郎さんの祖父が創業。2018年に2代目のお父様から会社を譲り受け、健太郎さんが3代目の代表取締役として新たなスタートを切りました。事業内容は鋼材販売、太陽光発電、トランクルームのレンタル、ミニコンテナハウスの開発・販売と多岐に渡ります。それには理由があり、今までは鉄工所への鋼材卸売を主力としてきましたが、近年は取引先が高年齢化により廃業するなど、鋼材販売は右肩下がりに。そこで、2016年頃から市場性の見込める新規事業として、ミニコンテナハウスの開発・販売に力を入れ始めました。
父と息子。お互いを補い合いながら、夢の実現化へ
お父様は1級建築士として建築設計事務所に勤めた経験があり、その経歴と鋼材を安価に扱うことができる強みを結びつけ、ミニコンテナハウスを開発。骨組みから設計し、自社工場で製造するため、大きさもカスタマイズ可能。また、最大の売りは価格の手頃さ。他社は販売価格が200万~300万円になることもありますが、2.5畳タイプで52万円〜と、一般の方でも手が届きやすい価格で販売しています。「父はどちらかというと職人気質。ですので、どちらかというと外に出ていくのが得意な私が、営業担当として販売しています」と健太郎さん。お父様と話し合いを重ね、時にはぶつかりあいながらも、お互いの強みを生かし、足りない部分を補いあい、新しい構想を練り続けています。
自らカフェをオープン。次は主婦さんを応援したい。
健太郎さんは実際のミニコンテナハウスの使い勝手を体験してもらおうと、工場敷地内にカフェをオープン。そこで感じたのは「自分のお店を持つって、こんなにも嬉しいものなのか!」という純粋な喜び。内装を作りこんだり、コーヒーの研究をしたりと、自分好みの空間に作り込んでいく楽しさを感じられたそうです。「最近思うのは、身近にいる主婦さんのハンドメイドの質の高さ。中にはお店を持ちたいのに、初期投資の高さで諦める人の声も聞きます。そういった方の夢の実現を、このミニコンテナハウスで後押ししたい。」と、今後の意欲を語っていただきました。
自社製品の商品価値を伝えきれない壁
しかし、優秀なミニコンテナがあっても、売れないことには話にならない。現在、健太郎さんがぶつかっている壁は売り先。「お客様にミニコンテナを見せると、みんな欲しいと言ってくださいます。しかし、購入までには至らないことも多いんです。どうやったら購買意欲を高められるのか、どうやったら商品の価値を適切に伝えられるのか。まだまだ乗り越えなければならない壁はいくつもあります。」と、自社製品の販売の難しさを感じられているそうです。
どんな困りごとも解決できる技術者集団を目指して
現在、後継者不足で鋼材販売の取引先である鉄工所をたたむ方が増えています。しかし、台風の後などは、鉄工所に「屋根が飛んだから直して欲しい」などの依頼が多く寄せられ、街の鉄工所の必要性を肌で感じてきた健太郎さん。そこで、自社で鉄工所も兼ね備えた体制にするべく、現在、取引先に見習いとして修行に行かれているそうです。「いずれは少数精鋭の技術者集団として、日南市民に頼られる存在になりたい」と健太郎さん。修理に関するどんな困りごとも解決できる会社を目指し、日々技術を磨いていらっしゃいます。
同年代の若者同士、アイディアを持ち寄って形にしたい
実は佐藤さん、大学時代は兵庫で過ごした経験もありましたが「やっぱり地元の安心感には敵わなかった」と、日南にUターン。無条件の安心感があるからこそ、新しいことに挑戦できるということを実感されているそうです。「しかし、子どもの頃と今の日南の風景は、年々変わってきています。どうしても懐かしく感じるのは、小学生の頃に毎週通った油津の土曜夜市。そうやって人が賑わう場所を、同年代の人たちとつくってみたいですね。」
そんな健太郎さんは現在、同級生と新たな取り組みを始めています。例えば、移動式のバーをしながら日本一周をする友人と、軽トラックの荷台に載せられるキャンピングカータイプのコンテナをオーダーメイドで作り、その門出を祝ってお祭りを開催したり。そのお祭りでハンドメイド商品をキャンピングカーに並べたり。
「現在、日南には移住者も増えているので、その方たちともアイディアを持ち寄って、地元日南をもっと面白くしていきたいです」
そう語る20代の若社長の健太郎さん。ぜひ気になる方は、鋼材所を訪ねてみてはいかがでしょうか。美味しいコーヒーとともに健太郎さんが出迎えてくれるはずです。
(2019/5/8取材 渡邉茜)