2024.12.28
「田村農園」を営む、田村 健登さん
豊かな自然に囲まれた日南市吉野方で、家族と共に田村農園を営んでいる田村健登さん。
田村さんらが務める農園は、家族と支え合いながら発展し続けていています。
田村農園で、生産している農作物はお米とピーマン。これらの農作物は心を込めて育てられた後、JAに出荷されたり、日南の飫肥にある”飫肥本町”のお弁当に使用されたりしています。また、”スーパー戸村”では”日南日々米”というお米を販売しています。
↑田村農園で育てられたお米の”日南日々米”。品種はミルキープリンセス。
ふっくらと炊きあがったご飯。普通のお米よりも甘みが強く、噛めば噛むほど甘みが増します。
もちもちした食感で食べ応えがあり、おかずとの相性も抜群です。
作物の育成には欠かせない”マルチシート”は、雑草が増えないようにしたり土の温度調節をしたりするために畑に覆われます。一般的にはビニール素材の“ビニールマルチ”というものが使用されますが、田村農園では、紙素材の“紙マルチ”を使用しています。紙は木から作られているため、土に戻る特徴があります。そのため、環境への負担を減らしながら、土の健康を守ることができます。
その他にも、ハウス内を温めるためにボイラー(上の写真)を使用しています。通常、このボイラーは”油”を用いて温風を出しますが、田村農園では”木質ペレット”と呼ばれる木を燃やしています。油を使うと、燃えるときにCO²を排出し、環境に負荷をかけてしまいます。
しかし、木質ペレットは木材から作られているため、光合成を通じてCO²を吸収し、実質的に環境への影響をプラマイゼロに抑えることができます。このように、田村農園は持続可能な農業を実践し、環境への配慮を行っています。
わたしの進むべき道
家が農家であることから、幼い頃は農業の手伝いをしてきた田村さん。日常生活の中で農業が身近にあり、その大変さや辛さを子ども時代から体験しています。
しかし、それと同時に、そうした困難を乗り越えることで得られる喜びを家族と分かち合ってきました。
これらの経験を通じて、農業に対する深い思いが芽生え、自らの進むべき道として農業を選ぶ決意を固めました。
「夜遅くまで父と母が仕事をしていたので、『大変な仕事だな』とはずっと思っていましたが、日常生活の中で農業が身近にありすぎて。他の仕事に就くこともできたかもしれませんが、農業が自分の進むべき道だと感じました」
Uターンしてみて気付いた、自分にあった環境
知識や技術を身につけるため、宮崎大学の農学部へ進学。大学で学ぶ中で、「自分で作ったものを自分で売りたい」という夢や、「野菜がどのように流通するのかを学びたい」という思いが湧きあがります。
その思いがきっかけとなり、知人から「野菜の流通を手掛ける会社を立ち上げてみないか」と声をかけられました。それから毎日、目まぐるしい日々が始まります。休む暇もないほど忙しい中でも、常に前を向き、挑戦し続けました。また、これを機に地元の宮崎から東京へと移り住むことに。東京での1年間も全力で仕事に専念し、多くの経験を積みます。その後、会社を畳むタイミングで地元の宮崎へUターンしました。
「東京での生活はすごく楽しかったし、 刺激的でした。しかし、私は地元である宮崎が好きだし住みやすいと感じたんですよね。都心の環境は嫌いじゃないけれど、混雑していて人が多い場所に常にいたいわけではないので。どちらかというと、 車で移動して、好きな場所に行く生活の方が合っていると思ってます」
繋がって今がある
Uターン後、家族と共に農業を営んでいる田村さんは、日々の作業を通じてその“幸せ”や“ありがたみ”を実感しています。「祖父や父が繋いできたからこそ、今の自分があると思っています。受け継がれた畑で野菜を作り続けてくれたから、畑の質がどんどん良くなって、今良い野菜を作ることができています。そのすべてが繋がって今に至っています。『繋がなければならない』という責任感や、『家族で代々と伝わる土地を守らなければならない』という使命感をすごく感じました」
田村さんの言葉からは、家族や地域との絆、繫がりを大切にしながら、次世代へと受け継いでいく覚悟が伝わってきました。また、代々受け継がれてきた農業は、田村さんにとって家族の絆を育む重要な役割を担っています。
知られざる”農業”のすごさ
「農業は野菜を作って売るだけの仕事ではない」と田村さんは言います。
「農業は、作って売るだけではなく、地域を支えるためにさまざまな役割があるんですよね。
例えば、私たちが作った田んぼに水が溜まるんですよ。それには田んぼに水が溜まることでお米が育つ効果もある一方で、川への流入を減らす効果もあるんです。そうすることで、下流の方で水が溢れるリスクを減らしてくれるんです。田んぼがなくなると、水はすべて川に流れて、洪水するリスクが高まるんですよね。農業は、一見分かりにくいかもしれませんが、実際には町の景観や安全を守る重要な役割を果たしていて、すごく重要な仕事なんですよね。こうした農業の多様な側面にも魅力を感じているんですよね」
その他にも、地域の小学校で田植えや稲刈りの講師をしている田村さん。子どもたちに自然と触れ合う楽しさや体を動かす面白さを伝えます。こうした、“農業”という仕事を通じて、次世代の農業を支える人材育成にも寄与しています。こうした活動は、地域全体の農業への理解を深め、より持続可能な未来を築くための重要な一歩だと感じます。
田村さんの情熱と努力が、地域の未来に大きな影響を与えています。
“日南”だから道が開ける
農業は、「大変」や「難しそう」といったイメージがあります。しかし、ある程度のサポート体制が充実しているのが”日南の農業”。
「日南の農業にはさまざまなサポート体制が整っており、それを活用すればすごく農業しやすいです。JAの協力も得られますし、何より自分一人で全てをこなさないといけないわけではないので。地域の農家さんも協力してくれるため、日南で農業をするといろいろな道が開けると思います」
次代を担って
農業を筆頭に、地域のことや自身の家族に対しても、常に強い情熱や愛情を持ちながら、人のために活躍し続けている田村さん。そんな田村さんに今後やりたいことや目標を聞いてみました。
「現在、“日南日々米”というブランド名のお米を販売しています。その背景には、日南で育ったものを日南の人たちが『美味しい』と感じて食べてもらえる環境を作りたいという思いがあるんです。そんな思いから、日南の日々のお米になるように“日々米”という名前をつけたんです。このお米を作りながら地域を守り続けていきたいと考えています。地域がしっかり守られて、日南の自然も保たれるような方法で農業を行い、貢献していきたいなと思っています。そうすることで、子どもたちが農業を引き継いでくれたら面白いですし、今後も農業がずっと続いていけば良いと考えています」
そう話してくれました。おじいさんから始まった農業。農具を手に、休む暇もなく少しずつ農地を広げていきました。そして、この姿を見て育った田村さんのお父さんは、その伝統を受け継ぎながら、農業をさらに進化させていきました。
今では、田村さんがそのバトンを受け取り、次代へと繋げるための取り組みを行っているのです。常に、未来を見据えて行動していく姿勢と、地域や家族の繫がりを大切にして、情熱を持って農業へ向き合う姿が周囲の人々の大きな刺激となっています。田村さんの物事に対する熱意や思いが地域全体に広がり、農業の未来を明るく照らす光となっているのです。ここ“日南”だからこそ、地域と共に歩みながら、自分の可能性を広げ、未来を創る力を育むことができるのです。
新しい挑戦が、あなたを待っています。