2019.3.22
株式会社油津応援団 コミュニティーマネージャー 杉本恭佑さん
人通りの少ないシャッター街をよみがえらせ、全国から脚光を浴びつづける油津商店街。その奇跡の商店街では今、新たな物語が始まろうとしています。その立役者に抜擢されたのが、1月から地域おこし協力隊として油津応援団のコミュニティーマネージャーに就任した杉本恭佑さん(27)。油津応援団では油津商店街の再生を2013年から行ってきましたが、現在新たな課題があります。それは、「テナントは完成したが、人の流れやコミュニティが形成されていない」というもの。それを20代の若い感性をつかって取り組んで欲しいと、地域の方々は期待を寄せています。
宮崎が好き。ただそれだけ。
杉本さんは1991年、熊本生まれ。大学時代を過ごした宮崎に惚れ込み、その後東京では3年間、宮崎産の野菜を売るベンチャーで働く傍ら、複業でイベンターとして宮崎に関わったり、地域の外と中を繋ぐことで生まれるコミュニティづくりをしてきました。「宮崎が好き」。ただそれだけなのに、その宮崎を偏愛する熱量が日南の人にも届き、この仕事が舞い込んで来ました。
若者30人を、日南に連れてきた。
杉本さんは半年前「KINAIYO!」と称した、若者30人を日南に連れてくるツアーを仲間と企画しました。このツアーの目的は、宮崎の関係人口をつくること、また参加した人自身が自分の生き方を見つめなおすことの2つ。そしてツアー終了後、蓋を開けてみると、ツアーに参加した半数が宮崎に再訪し、会社を転職した人が6名、宮崎と行き来しながら仕事をする人も生まれ、なにより人自分自身が日南に移住していました。
商店街というフィールドで遊ぶ人を増やす
そんな杉本さんに課された商店街のミッションは「コミュニティづくり」と「人の流れをつくること」。油津商店街は、従来あるような生鮮3品が揃う日常的な商店街ではなく、飲食店と企業が多く集まり、日常的に自然と足を運ぶ場所ではないことが特徴。そこで、商店街というフィールドをつかって遊ぶ人たちを増やすことがポイントになると考えているそう。
例えば、最近始めた「アブカツ」という活動。これはイベントというより、10人くらいで定期的に続けられるクラブのようなもので、最近ではボードゲームを楽しむ会が盛り上がっています。アブカツとしては、ランニングや朝活など、誰でも参加できて継続的に実施できる活動を増やして行く予定。
現在は商店街内にある多世代交流スペースyottenの運営責任者、ゲストハウスfan!の運営も担当しています。
無人本屋、タマちゃんショップを続々オープン
商店街の空きコンテナハウスにも新しい動きが。4月末には無人本屋「ほん、と」をオープン。店員のいない空間には、誰かが読んだ本が、他の人にも読んで欲しいという気持ちと一緒に並べられ、本を通して人と出会って欲しいという願いが込められています。また、油津応援団とのコラボで「タマチャンショップ」をオープンさせました。「商店街に足を運んでもらうきっかけをつくり、他の店にも足を伸ばしてもらうきっかけになれば」と、次々にアイディアを形にされています。
自分が楽しんだ結果、商店街が楽しい場所になるために
次々にイベントを仕掛ける杉本さんでも、日南で新たな挑戦をすることに怖さがなかった訳ではありません。漠然とした「商店街を盛り上げて欲しい」という、先輩からの期待にプレッシャーを感じたり、「好き」を仕事にすることで逃げ場を無くす怖さを感じたりすることもあったそうです。
しかし、今まで油津を盛り上げてきた先輩方と飲んだ際に「きょーちゃん自身が楽しんだ結果、商店街が楽しい場所になればいいんだよ」と言われ、肩の荷が降りたそうです。まず自分が楽しむ。その楽しさに人は巻き込まれ、それが巡り巡って、商店街が盛り上がることに繋がって行くのでしょう。
世界は変えられないけど、まわりの人なら変えられるかもしれない
「僕は世界を変えられない、ということに学生の頃に気づきました。でも、世界は変えられないけど、イベントなどで場をつくることで自分の周りにいる人のことなら変えられるかもしれない。そして、そのまわりの人たちが、世界を変えてくれるかもしれない。」そう語る杉本さん。イベントを仕掛ける彼の原動力は、この言葉がすべての答えなのでしょう。
全国の地域おこし協力隊の会合「全国よりあい」に向けて
杉本さんは日南市の「地域おこし協力隊」として、1年間の任期で油津商店街を中心に活動しています。この地域おこし協力隊という制度は、地方自治体が地域外の人材を積極的に受け入れ、地域力高めていく制度です。そこで全国5000人の地域おこし協力隊が今以上に活躍できる環境づくりのために、「全国よりあい」というカンファレンスを開催することに。定められた任期の中で情報の共有は必要不可欠です。 お互いの活動や知見をシェアすることで地域づくりのありかたを見つめ直し、 それぞれの地域で活躍し、その後もつながり続けるコミュニティを創出したい。」と、6月末の開催に向けて準備をすすめています。
僕は一人では何もできない
「今抱えている一番の課題は?」と伺ったところ、「同年代の友だちが少ないこと」と、寂しげに答えられていました。「KINAIYOの時もそうだったけど、僕はイベントを企画することはできても、それしかできないんです。みんなが手伝ってくれて、初めて成り立つ。だから、まずはとにかく友だちが欲しい!」
そう語る杉本さんですが、いつも彼の家には誰かがひっきりなしに訪ねてきます。日南で新しいことをしようとする大学生が2週間滞在したり、県外から日南にやってくる友だちの友だちが泊まりにきたり。ぜひこれから日南に来ようと思っている方も、彼に遠慮なく連絡してみてください。きっとその出会いが、あなたにとっても、日南にとっても面白い変化に繋がるはずです。
(2019/2/25取材 渡邉茜)